障害のある人が受け取れる「工賃」とは?

 「工賃」とは、一般に作業や労働に対して支払われる報酬や賃金のことです。
 企業や工場で働く労働者や、職人などが受け取る賃金として使われることが一般的です。
 具体的には、製品の製造や組み立て、修理などの作業に対して支払われる報酬を指します。

 ただし、今回説明する工賃に関しては、「福祉用語」としての「工賃」になります。

 上記の工賃と似て非なるものと思って頂いて良いかと思います。
 一般的な考え方の工賃と福祉サービスの用語としての工賃は異なるものであることを、まずはご注意ください。

障害のある人が受け取れる「工賃」とは?

 就労継続支援B型などの就労系福祉サービスを通じて、生産活動を行った人に対して支払われる賃金相当のお金が「工賃」になります。

 雇用契約を結ばずに作業活動する就労継続支援B型の利用者は、作業に対しての対価を賃金ではなく、「工賃」として受け取ることになります。

 就労支援で行う作業は事業所によっても異なりますが、利用者の特性やペースに合わせたデータ入力などの事務や清掃、接客、製造、調理、農作業など、多様な軽作業が用意されており、その活動で生産したものに利益が発生することがあります。
 しかし、これらの活動は一般的な雇用契約に基づかないため、生産物に対しての対価・成果報酬は賃金(給料)という形ではなく、「工賃」として捉えられます。

 これらの支援を行っている事業所には就労継続支援B型や一部の就労移行支援事業所、生活介護事業所などがあります。
 各個人それぞれの事情や特性に合った軽作業を通して、生産活動を行うことができるようになっています。

 各事業所によって、強みとなる生産活動の職業分野がある場合もあり、利用を検討する際にはそこも考慮すると良いでしょう。

福祉の「工賃」の注意点

 政府がまとめた資料によると、国内における工賃の平均金額は平成30年度時点で、月額「16,118円」、時給換算にすると「214円」となっています。
 一般的な労働とは異なることから、雇用契約を結んで働く就労継続支援A型や、法律に基づく各自治体の最低賃金と比べると金額がかなり低いことがお分かりいただけるかと思います。

 工賃の具体的な金額については、生産活動の内容や障害の程度、働く時間などさまざまな条件によって異なります。
 毎日のように生産活動に参加できる人もいれば週に2日しか参加できない人もいます。
 各自の能力も異なるため、工賃に個人差が出てしまうことは避けられないでしょう。
 そのため、国を挙げて問題になっているのが、「平均工賃」です。

工賃向上のための取り組み

 生産活動に参加できても、工賃だけで自立した生活を送るのは難しい状況です。
 そこで国が先頭に立ち、工賃金額をアップする取り組み(工賃向上計画支援事業)を行っています。
 この事業では各自治体や事業所と連携し、地域における就労の機会を増やしたり、事業所の経営に関するアドバイスを行っています。
 十分な水準に達しているとは言えないかもしれませんが、こうした事業も手伝って、工賃は年々増額傾向にあります。

まとめ

 体調や障害などの理由で、一般的な雇用契約を結んで働くことが難しい人が、就労継続支援B型などの就労支援を通して生産活動を行い、収益が発生した際に受け取るお金が「工賃」です。
 前述の通り、工賃だけで自立した生活を送ることは難しいですが、障害年金や生活保護などの別制度を併用することも可能です。
 また、工賃そのものが年々増加傾向にあることも事実です。

 就労支援を通して、生産活動の対価として工賃をもらうことで働く自信がついたり、働き続けることのモチベーションになるという人もいます。

福祉的就労とは?

 心身に障害があり、一般企業で働くことが難しい場合などに福祉サービスを受けながら働く働き方を福祉的就労といいます。  福祉的就労を行っているのは、障害者総合支援…

(おまけ)
就労継続支援A型とB型の違い

施設種類雇用契約年齢制限利用期間制限
就労継続支援A型あり(賃金)原則18歳以上~65歳未満なし
就労継続支援B型なし(工賃)なしなし

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