WHOのICD-11ついて
ICDとは何なのか、そして今回の改訂で何が変わったのかを見ていきましょう。
ICDとは?
ICD(国際疾病分類、International Classification of Diseases)は、世界保健機関(WHO)が定めた病気や健康問題を分類するための国際基準です。
医師や研究者が病気を診断し、データを共有する際に使用される重要なツールです。
ICDは、以前お伝えしたアメリカ精神医学会の作成する基準であるDSMと同様に、精神科や心療内科の医師が診断を下す際の基準となるものです。
2018年6月に公表した第11回改訂版(ICD-11)がICDの最新基準となります。
DSM-5とは?
DSM(ディーエスエム)とは、アメリカ精神医学会が作成している、精神疾患の診断基準・診断分類のことです。 正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル」といい、英…
ICD-11の注目すべき改訂箇所
では、ICD-11での注目すべき改訂箇所をいくつかご紹介します。
性別不合(Gender Incongruence)
ICD-11では、性別不合が精神障害のカテゴリーから除外されました。
これは、大きな一歩です。
性別不合は、性別アイデンティティが生まれたときに割り当てられた性別と一致しない状態を指します。
新しいカテゴリーとして、「性の健康」の下に分類されています。
ゲーム障害(Gaming Disorder)
ICD-11では、ゲーム障害が正式に新しい診断名として追加されました。
これは、ビデオゲームやオンラインゲームのプレイがコントロール不能になり、日常生活に悪影響を及ぼす状態を指します。
長時間プレイが続き、他の活動や義務を犠牲にすることで生活の質が低下することがあります。
複雑性PTSD(Complex PTSD)
複雑性PTSDは、持続的なトラウマによって引き起こされる精神的な障害です。
ICD-11では、従来のPTSD(心的外傷後ストレス障害)とは区別され、持続的なトラウマ(例えば、長期間にわたる虐待や戦争体験など)による症状に特化した新しい診断名が追加されました。
病理的感情障害(Bipolar and Related Disorders)
ICD-11では、双極性障害や関連する感情障害に関する診断基準が更新されました。
例えば、双極性障害の診断において、躁病エピソードやうつ病エピソードの持続期間についての基準が明確化されました。
痛みの障害(Chronic Pain Disorders)
慢性痛に関連する障害もICD-11で新たに注目されています。
慢性的な痛みが患者の日常生活に与える影響を評価する新しいカテゴリが追加され、適切な治療法の提供が求められています。
焦燥性障害(Anxiety and Fear-Related Disorders)
ICD-11では、焦燥性障害や恐怖症に関する診断基準が詳細化されました。
例えば、広場恐怖症(アゴラフォビア)や社会恐怖症(ソーシャルアングザイエティ)の診断基準がより明確になり、治療の指針がより具体的になっています。
強迫性障害(Obsessive-Compulsive and Related Disorders)
強迫性障害(OCD)や関連する障害に関する診断基準も更新されています。
強迫性行為や強迫観念に関する診断基準が詳細化され、より的確な診断と治療が可能となっています。
認知症(Neurocognitive Disorders)
ICD-11では、認知症や認知機能低下に関する新しい診断基準が導入されました。
これには、アルツハイマー病やその他の認知症に関する詳細な基準が含まれています。
以上のように、ICD-11では多くの新しい診断基準やカテゴリが導入され、医療現場での診断や治療の質を向上させることが期待されています。
これにより、患者にとってより適切なケアが提供されることが目指されています。
日本における現状
ICD-11は、実はまだ日本においては完全に実用化されていない部分があります。
例えば、翻訳や導入が未完であるため、医療現場での使用に関してはまだ十分な準備が整っていない状況です。
しかし、徐々に改善されていくことが期待されています。

まとめ
ICD-11の改訂は、医療の現場において非常に重要な役割を果たします。
性別不合、ゲーム障害、複雑性PTSDといった新しい診断名の追加は、多様な健康問題に対する理解を深め、適切な治療を提供するための一歩となります。
今後の日本での導入が進むことで、医療の質がさらに向上することを期待しましょう。

お気軽にお問い合わせください。048-507-6571受付時間 9:30-16:00 [土・日・祝除く]
お問い合わせ