カサンドラ症候群とは?

 カサンドラ症候群(カサンドラ情動剥奪障害)とは、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ人やその周囲の人との間で、コミュニケーションや情緒的な関係の構築が難しく、精神的ストレスから心身にさまざまな症状が出ている状態を指す言葉です。

 カサンドラ症候群は、2000年代から広く使われるようになりましたが、現在、正式な疾患名ではありません
 そのため、診断名としてのカサンドラ症候群ではなく、「状態」として捉えることになります。

 また、カサンドラ症候群の場合、対人関係においてどちらか一方が悪く、どちらか一方が正しい、という問題ではないことに注意が必要です。

 カサンドラ症候群の主な特徴は次のとおりです。
・ASDの特性を持つ人との間でコミュニケーションのずれが生じる
・ASDの特性を持つ人との間で理解の行き違いや摩擦が起こる
・ASDの特性を持つ人との間で感情表現や空気の読み取りが難しく、人間関係にストレスを感じる
・ASDの特性を持つ人との間で報われない支援の日々から精神的苦痛が大きくなる
・当人の苦しみがパートナーや周囲の人に理解されず、孤立した状態に置かれる

 カサンドラ症候群は、職場内でも起こることがあり、「職場内カサンドラ」などとも呼ばれます。

 以下に具体的な例を挙げてみます。

(夫がASD、妻が非ASDのケース)

 ASDの伴侶を持った配偶者は、コミュニケーションがうまくいかず、ASDのご本人には理解してもらえないことから自信を失ってしまうことがあります。

 また、世間的には問題なく見えるASDの伴侶への不満を口にしても、人々から信じてもらえない、共感を得られないということもあります。
 その葛藤から精神的、身体的苦痛が生じるという状態です。
 伴侶との情緒的交流がうまくいかない中、何が何だか理由は分からないけれど苦しい、周囲は苦しんでいることを理解してくれないという二重の苦しみの状態にあります。

 本人が問題の本質が分からないこと、周囲が問題の存在さえ理解してくれないこと、この二つの要素が現在のカサンドラ症候群を巡る問題の本質にあります。
 前述の通り、現在のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)その他には認められていない概念のため、疾患名ではありません。

 カサンドラ症候群について理解を深めることは、決してASDの人を否定したり差別を助長したりすることではありません。
 前述のようなASD-非ASD配偶者間に生じる問題の原因に向き合い、適切な支援を受け、お互いがパートナーのより良い生き方を模索するために必要なことだと言えるでしょう。

 カサンドラ症候群はパートナーだけではなく、家族、友人、会社の同僚にも起こり得るとされています。
 カサンドラ症候群を知ることは、定型-非定型間のコミュニケーションのあり方を認識することであり、ひいては、ASDの社会的認知度を高める一助にもなるでしょう。
 この記事が、カサンドラ症候群やASDについての理解を深める一助となれば幸いです。

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