アドラー心理学を参考にした心理学のお話 第25回

こんばんは。
埼玉県北本市で障がいをお持ちの方の就労を支援する福祉事業所
「てんとうむし北本」の桜井です。

さて、今回は「器官劣等性に対する建設的な対処の仕方」についてお話します。

先ず、『建設的な対処』という言葉のわかりにくいですよね。
「建設的」とは、物事をよりよくしていこうと積極的にのぞむ姿勢、
ということです。
ですから、「器官劣等性に対する建設的な対処」とは
「日常生活に非常に大きな影響を与える障害を持っている現状を
よりよくしようと積極的にのぞむ行動」
といったところでしょうか。

言葉であれこれ説明してもわかりにくいので、例を挙げてみましょう。

皆さんは棟方志功という版画家を知っていますか?
彼は強度の弱視だったそうです。
しかし、弱視であることを理由に目を使うことはあきらめず、
弱視の目で、一風変わった独特な版画を作成しました。
これは、弱視である現状をより良くしようとした結果ですよね。

もう一つの建設的な対処は、劣等性のある器官のことはあきらめて
他に器官でそれを代償しようという働きです。
例えば、「目が弱いなら、耳を使おう」ということです。
視覚が弱い方の多くは、聴覚が敏感ですよね。
これは目以外の感覚器官を非常に敏感になるように、
無意識に訓練をした結果です。
これに代表されるのが、音楽家です。
スティービー・ワンダーという音楽家をご存知ですか?
テレビCMなどにも出演していた世界的な音楽家です。
この方も目が不自由なんですが、
その代わりに聴覚を訓練して素晴らしい音楽家となったわけです。

これらのように劣等な器官を鍛えることによって、
あるいはそれ以外の器官で持って、その劣等性を自力で補償することによって、
自分の力で生きていこうと決断したとすれば、
それは器官劣等性に対する建設的な回答となるわけです。

次回は対称的な「破壊的な対処」についてお話します。